1986年の今日(6月14日)、1位を獲得した Patti LaBelle(パティ・ラベル) & Michael McDonald(マイケル・マクドナルド)の “On My Own” を解説・和訳しました。
別れた恋人が互いの未練を胸に自立を誓うという曲で、特にエンディングのヴォーカル・インタープレイが印象的なAORとR&Bを掛け合わせたミッドテンポのバラード。
もともとディオンヌ・ワーウィックに提供されたこの曲のソングライターは以下のナンバーワン・ヒットも手がけている作曲家のバート・バカラックと作詞家のキャロル・ベイヤー・セイガー夫妻(当時)。
This Guy’s In Love With You / ハーブ・アルパート(1968年、4週1位)
Raindrops Keep Fallin’ On My Head / B・J・トーマス(1970年、4週1位)
Close to You / カーペンターズ(1970年、4週1位)
Arthur’s Theme / クリストファー・クロス(1981年、3週1位)
That’s What Friends Are For / ディオンヌ・ワーウィック(1986年、4週1位)
歌詞的には、関係の終わりを迎えた二人が「それでもまだ心のどこかで相手を想い続ける」という切なさが描写されており、特に「離婚の話をしているけれど、僕らは結婚すらしていなかった」と例える一節が印象的で、終わった恋愛の後味がリアルに伝えられています。
楽曲的には、ピアノを軸にした柔らかな和音進行の上で、スムーズなベースラインと控えめなエレキギター、シンセのアクセントが重なり合い、広がりのあるAOR的テクスチャ(音の味わい)を形成しています。
バカラックの洗練されたメロディとセイガーの率直な歌詞が融合した曲が、パティ・ラベルのゴスペル由来の力強いヴォーカルとマイケル・マクドナルドのブルー・アイド・ソウル調の滑らかなヴォーカルでユニゾン(※1)で歌い上げられており、特にエンディング部分は離別の切なさと未練がより立体的に感じられるヴォーカル・インタープレイ(※2)になっていると思います。
※1 ユニゾン:2つ以上の声部や楽器が同じ旋律を同じ音程で演奏すること、または歌うこと
※2:インタープレイ:演奏者同士が互いの音を聴き合い、反応し合いながら演奏を進めること
ちなみに、パティ・ラベルとマイケル・マクドナルドは別々にレコーディングしたそうで、ビデオでも二人が異なる海岸線で歌う様子が分割スクリーンで映し出されており、物理的にも心理的にも離れている心情が表現されています。
また、女優のエリザベス・テイラーはこの曲の大ファンだったそうで、スタジオを訪ねたり、ラジオに電話リクエストを入れたりしたという逸話が残っています。
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当時(1986/06/14)のチャート
パティ・ラベルの全ヒット曲
マイケル・マクドナルドの全ヒット曲
和訳
[Verse 1]
[Patti LaBelle]
So many times
Said it was forever
Said our love would always be true
Something in my heart always knew
I’d be lying here beside you
On my own (×3)
何度も言ったわ
これは永遠だと
私たちの愛はいつも真実だと
でも心のどこかでずっと分かっていた
私はこうして一人で横たわることになると
独りきりで (×3)
[Verse 2]
[Michael McDonald]
So many promises never should be spoken
Now I know what loving you cost
Now we’re up to talking divorce
And we weren’t even married
たくさんの約束を交わしたけど
本当は言うべきじゃなかった
今なら分かる、君を愛することの代償が
今では離婚の話をしているけれど
僕らは結婚すらしていなかった
[Patti LaBelle]
On my own
Once again now
One more time
By myself
No one said it was easy
ひとりきりで
またこの瞬間がやってきた
もう一度
ひとりぼっちで
誰も簡単だなんて言わなかった
[Bridge]
[Michael McDonald]
But it once was so easy
かつてはすべてが簡単だった
[Patti LaBelle & Michael McDonald]
Well, I believed in love (I believe)
Now here I stand
I wonder why
愛を信じていた
そして今、ここに立って
なぜなのかと問いかける
[Hook]
[Patti LaBelle]
I’m on my own
Why did it end this way
On my own
This wasn’t how it was supposed to be
On my own
I wish that we could do it all again
ひとりきりで
どうしてこんな終わり方になったの?
ひとりきりで
こんなはずじゃなかったのに
ひとりきりで
もう一度やり直せたらいいのに
[Verse 3]
[Michael McDonald]
So many times
I know I could have told you
Losing you
It cut like a knife
Hey, you walked out and there went my life
I don’t want to live without you
何度も
伝えることができたはずなのに
君を失うことは
刃物で切られるような痛みだった
君が去ってしまい、僕の人生も消えた
君なしでは生きたくない
[Patti LaBelle & Michael McDonald]
On my own
This wasn’t how it was supposed to end
On my own
I wish that we could do it all again
On my own
I never dreamed I’d spend one night alone
By myself
ひとりきりで
こんな終わり方になるはずじゃなかった
ひとりきりで
もう一度やり直せたらいいのに
ひとりきりで
一人で夜を過ごすなんて夢にも思わなかった
ただひとりで
On my own
I’ve got to find out where I belong again
I’ve got to learn to be strong again
I never dreamed I’d spend one night alone
By myself (×3)
I’ve got to find out what was mine again
My heart is saying that it’s time again
And I have faith that I will shine again
By myself
I have faith in me
Oh
I know I’ll make it
By myself, by myself
ひとりきりで
もう一度、自分の居場所を見つけなければ
もう一度、強くなることを学ばなければ
ひとりで夜を過ごすなんて夢にも思わなかった
ただひとりで (×3)
もう一度、自分のものを取り戻さなければ
心が「今こそその時だ」と告げている
そして再び輝けると信じている
ひとりで
自分を信じている
ああ
きっと乗り越えられる
ひとりで、ひとりで