1992年の今日(7月4日)、1位を獲得した Sir Mix-A-Lot(サー・ミックス・ア・ロット)の “Baby Got Back” を解説・和訳しました。
従来の痩身美基準に異議を唱え、女性の豊満なヒップラインを讃えるユーモラスかつ挑発的な曲で、重厚なベースとキャッチーなフックが特徴的なヒップホップ。
解説
当時の恋人が体型を理由に職を得られないという悩みを抱えていたことに着想を得たというこの曲のソングライター兼プロデューサーはサー・ミックス・ア・ロット自身。
社会的に固定化された美の基準に対する個人的かつ文化的な反発心が曲作りの原動力となったそうで、スーパーボウルで流れたバドワイザーのCMに登場する痩せ型モデルへの違和感も契機となったそうです。
歌詞的には、黒人女性の身体への偏見を風刺した冒頭の「オー・マイ・ゴッド、ベッキー、あの子のオシリ見てよ」というセリフと、「俺は大きなケツが好きなんだ。ウソはつけない」という豊満な体型への力強い肯定を一人称で言っている(「大きなケツがいい」ではなく「俺は大きなケツが好き」と言っている)のが印象的で、全体的に女性の自己肯定感を高めるメッセージが散りばめられ、痩身美基準へのアンチテーゼになっています。
楽曲的には、チャンネル・ワンの “Technicolor”(1986年)からのサンプリングを軸にした重低音ベースラインとリズミカルなドラムパターンが特徴的で、攻撃的かつ軽快なグルーヴが作り出されています。
この曲は単なるユーモアや性的表現にとどまらず、美の基準に対する批評性を持つ点でポップカルチャー史において重要な位置を占めており、グラミーではベスト・ラップ・ソロ・パフォーマーを受賞、この年を代表する曲(年間2位)となり、ニッキー・ミナージュの “Anaconda”(2014年、最高位2位)など後続のアーティストにも影響を与えています。
ちなみに、自身の曲としては結果的に一発ヒット(ランキングは下記のリンク参照)となってしまったものの、サー・ミックス・ア・ロットはプッシーキャット・ドールズの “Don’t Cha”(2005年、最高位2位)でサンプリングされた “Swass” という曲を書いています。
また、巨大なオシリ型のセットの上でラップするという大胆な演出のビデオは、MTVで一時的に放送禁止になりましたが、夜間枠で再放送され人気を博しました。
リンク
当時(1992/07/04)のチャート
サー・ミックス・ア・ロットの全ヒット曲
一発ヒットランキング
和訳
[Intro]
Oh my God, Becky, look at her butt
it is so big,
オー・マイ・ゴッド、ねえベッキー、あの子のオシリ見た?
すっごく大きい
She looks like one of those rap guys’ girlfriends
but, you know
Who understands those rap guys?
まるでラッパーの彼女って感じ
だけどさ…なんなのあの人たち?
They only talk to her
Because she looks like a total prostitute, okay?
彼らって、見た目だけで話しかけてるんじゃない?
まるで売春婦みたいに見えるわよね
I mean, her butt, it’s just so big
I can’t believe it’s just so round
It’s like out there
I mean, gross, look, she’s just so black
あのオシリ、本当に信じられないくらい丸くて
目立ってて…
もうやだ、あの子って…黒人じゃない
[Verse 1]
I like big butts and I cannot lie
You other brothers can’t deny
That when a girl walks in with an itty bitty waist
And a round thing in your face, you get sprung
Wanna pull up tough ‘cause you notice that butt was stuffed
Deep in the jeans she’s wearin’
I’m hooked and I can’t stop starin’
俺は大きなケツが好きなんだ、ウソはつけない
他の奴らも否定できないだろ
腰がキュッと細くて、ケツが目の前に来たら、もう夢中さ
彼女が履いてるジーンズにパンパンに詰まったそのヒップに
俺は釘付け
Oh, baby, I wanna get with ya
And take your picture
My homeboys tried to warn me
But that butt you got makes
Oh, Rump-o’-smooth-skin
You say you wanna get in my Benz?
Well, use me, use me
‘Cause you ain’t that average groupie
写真を撮って、近づきたいって思う
仲間は警告してきたけど
そのケツは俺をクラクラさせる
なめらかな肌のレディ
俺のベンツに乗りたいって?
いいぜ、乗っかってくれ
あんたはただの追っかけじゃない
I’ve seen ‘em dancin’,
to hell with romancin’
She sweat, wet,
got it goin’ like a turbo ‘Vette
I’m tired of magazines
sayin’ flat butts are the thing
Take the average black man and ask him that
She gotta pack much back
踊ってるのを見たことあるし
恋愛なんてどうでもいい
汗をかいて、濡れてて
まるでターボ付きのコルベットみたいに勢いがある
雑誌が「平らなオシリが流行」なんて言ってるのにはうんざりさ
黒人男性に聞いてみな
「もっとボリュームが必要だ」って答えるさ
So, fellas, Fellas
Has your girlfriend got the butt?
(Hell yeah)
Tell ‘em to shake it
Shake it
Shake that healthy butt
だから、野郎ども! なあ野郎ども!
彼女のケツはでかいか?
(もちろん!)
だったら揺らしてやれ!
揺らしてみせろ!
その健康的なケツを揺らすんだ
[Hook]
Baby got back
(L.A. face with a Oakland booty)
ベイビー・ガット・バック(※1)
(顔はロス、ケツはオークランドの女)(※2)
(※1:ベイビー・ガット・バックの直訳は「ベイビーはバック(後ろ側、オシリ)を持っている」、すなわち「いいケツしてるぜ、ベイビー」というニュアンス)
(※2:「ロスの女のルックスを持ちオークランドの女のオシリを持つ女が最高」という意味で前作の “I Got Game” でも同じフレーズをラップしている)
[Verse 2]
I like ‘em round, and big
And when I’m throwin’ a gig
I just can’t help myself
I’m actin’ like an animal
俺は丸くて大きいのが好きだ
ギグ(※ライブ)を開けば
もう自制なんてきかない
まるで野獣みたいになっちまう
Now here’s my scandal
I wanna get you home
And ugh, double-up, ugh-ugh
I ain’t talkin’ ‘bout Playboy
‘Cause silicone parts are made for toys
さあ、これが俺のスキャンダルだ
君を家に連れて帰りたい
そして、うん、ダブルで…
俺が言ってるのはプレイボーイじゃない
だってシリコン製のパーツなんておもちゃのためのものだから
I want ‘em real thick and juicy
So find that juicy double
Mix-a-Lot’s in trouble
Beggin’ for a piece of that bubble
俺が好きなのは、むっちりしてジューシーな体型
そう、たっぷりと詰まったダブルを探してくれ
もう俺は欲しくてたまらない
そのプリプリしたヒップのひとかけらに夢中
So I’m lookin’ at rock videos
Knock-kneed bimbos walkin’ like hoes
You can have them bimbos
I’ll keep my women like Flo Jo
俺はロックのMVを見てる
内股で歩くバカ女たちは
まるで娼婦のような振る舞い
そんな女たちはお前にくれてやる
俺はフローレンス・ジョイナーみたいな女を選ぶぜ
A word to the thick soul sisters
I wanna get with ya
I won’t cuss or hit ya
But I gotta be straight when I say I wanna—
‘Til the break of dawn
Baby got it goin’ on
豊満なソウル・シスターたちに一言
俺は君たちに夢中だ
罵ったり暴力を振るったりはしない
でも正直に言わせてくれ
俺は…朝まで一緒にいたいんだ
ベイビーはほんとにイケてる
A lot of simps won’t like this song
‘Cause them punks like to hit it and quit it
And I’d rather stay and play
‘Cause I’m long, and I’m strong
And I’m down to get the friction on
この曲を嫌う奴も多いだろうな
だってあいつらはヤってすぐ去るような連中だから
俺はすぐ離れるより
ずっと一緒に楽しみたい
だって俺は長くて強くて
フリクション(※摩擦=性的な暗喩)だって望むところだ
So, ladies, Ladies
If you wanna roll in my Mercedes
Then turn around, stick it out
Even white boys got to shout
だからレディたち!レディたち!
もし俺のベンツに乗りたいなら
さあ向きを変えて、突き出してみせてくれ
白人の男ですら叫ばずにはいられない
[Hook]
[Bridge]
Yeah, baby, when it comes to females
Cosmo ain’t got nothin’ to do with my selection
36-24-36? Haha, only if she’s 5’3″
そうだベイビー、女を選ぶってことに関しては
コスモ(※雑誌)なんて俺の選び方とは無関係さ
バスト、ウエスト、ヒップが91-61-91?
ハハ、それは身長が160cmくらいだったらの話だな
[Verse 3]
So your girlfriend rolls a Honda
Playin’ workout tapes by Fonda
But Fonda ain’t got a motor
in the back of her Honda
お前の彼女はホンダに乗って
ジェーン・フォンダのワークアウトビデオで
汗を流してるけど
フォンダはホンダの後ろに
モーターを積んでいないんだぜ
My anaconda don’t want none
Unless you’ve got buns, hun
You can do side bends or sit-ups
But please don’t lose that butt
俺のアナコンダ(※アソコ)は
バンズ(※大きなオシリ)しか欲しがらない
側屈や腹筋をしてもいいけど
お願いだからそのケツだけは失わないでくれよ
Some brothers wanna play that hard role
And tell you that the butt ain’t gold
So they toss it and leave it
And I pull up quick to retrieve it
男の中には格好つけて
『ケツに価値はない』って言う奴もいる
だから簡単に捨てて
関係もすぐに終わらせるんだ
他の奴らが見捨てるなら
俺はすぐに迎えに行く
So Cosmo says you’re fat
Well I ain’t down with that
‘Cause your waist is small and your curves are kickin’
コスモ(※雑誌)が「太ってる」って言ってるみたいだけど
俺はそんな意見
まったく同意できない
だって君はウエストが細くて
魅力的な曲線を持ってるんだから
And I’m thinkin’ ‘bout stickin’
To the beanpole dames in the magazines:
You ain’t it, Miss Thing
Give me a sista, I can’t resist her
雑誌に出てくるガリガリ女を選ぼうかとも思ったけど
君はそんな奴じゃない ミス・シング(※女性への呼びかけ)
俺が欲しいのはシスタだ
抵抗できないくらいにね
Red beans and rice didn’t miss her
Some knucklehead tried to diss
‘Cause his girls are on my list
He had game, but he chose to hit ‘em
And I pull up quick to get wit ‘em
「レッドビーンズ&ライス」はしっかりその身体に届いてる
それなのにアホがディスりやがった
だって、あいつの彼女たちは俺のリストに入ってる
あいつはイケてたけど、手荒く扱う道を選んだ
だから俺はすかさず車で迎えに行って、ちゃんと向き合うんだ
So ladies, if the butt is round
And you want a triple X throwdown
Dial 1-900-MIX-A-LOT
And kick them nasty thoughts
だからレディたち
丸みのあるヒップを持ってて
ちょっと刺激的な夜を望むなら
“1-900-MIX-A-LOT” にダイアルして
その欲望を行動に移してしまえ
[Outro]
Baby got back (×2)
Little in the middle but she got much back (×4)
ベイビー・ガット・バック
真ん中は引き締まってるけど
ケツにはしっかりボリュームがあるぜ